2024.11.22

特集記事

文・写真: 山さん
2022.09.25

終了しました

『ヒンドゥーの神々の物語』 サンシャインシティの古代オリエント博物館で開催♪ 神々に対するイメージの変遷を、500点に及ぶ豊富な展示品で追う特別展へ行こう!

ヒンドゥーの神々の物語展

ヴィシュヌ、シヴァ、ガネーシャ、ハヌマーン・・・。漫画やアニメ、小説、ゲームなど、きっとどこかで耳にしたことのあるヒンドゥーの神たちは、現在までどう表現され続けてきたのか!? 時代と共に変わり続けてきた表現方法の違いを、膨大な資料と共にで振り返る、気になる展示会が始まりました!

*掲載内容は2022年9月22日開催の内覧会時点の情報で、内容を保証するものではありません。
*掲載写真はすべて編集部による。

EVENT DATA

『ヒンドゥーの神々の物語』【 東京会場 】

撮影OK(写真のみ)
オーディオガイドあり
グッズ販売あり
コラボ企画あり

●会場古代オリエント博物館(東京都豊島区東池袋3-1-4 サンシャインシティ文化会館ビル7F)
●会期2022年9月23日(金)~11月27日(日)
●入場料一般 1000円/高校・大学生 800円/小中学生 400円 *平日割引あり(詳細は公式サイトへ)
●開催時間10:00~16:30 *最終入館16:00
●休催日無休
●最寄り駅各線「池袋駅」35番出口から徒歩15分
●公式サイトhttps://aom-tokyo.com/exhibition/220923_hindu.html

『ヒンドゥーの神々の物語』とは!?

本場インドだけで10億人越えの信者が存在し、キリスト教、イスラム教に次ぐ、世界3位の規模を誇る宗教といわれるヒンドゥー教は、崇拝する神が複数存在する多神教。

ヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーの3大神を筆頭に、ラクシュミーやクリシュナ、ガネーシャなど、様々な神が存在しますが、本展はそれらの神々が、時代ごとにどう表現されてきたのかを紹介する展覧会です。

彫刻や寺院といった造形物ではなく、一般の生活者(庶民)が日常的に崇拝する、布製品や絵画、印刷物といった媒体を通じて、神々のイメージがどう広まってきたのかを紹介するのが本展の特徴。展示品はインド大衆宗教図像の収集家として知られる黒田 豊さんのコレクションを中心に、「福岡アジア美術館」や「平山郁夫シルクロード美術館」「古代オリエント博物館」の収蔵品などで構成されています。

ヒンドゥーの神々の物語展
●展示品は土器やインド更紗(さらさ・布製品)、ガラス絵、民族画、写真、現代イラストなど、いろいろ。わずか数センチのコインから、1m越えの更紗まで、500点あまりの展示品を鑑賞可能です!

ちなみに黒田さんは、これまで個人で収集されたコレクションを、散逸させずに後世に伝えてもらえればと「福岡アジア美術館」にすべて寄贈されているのですが、本展の企画はそれが1つの切っ掛けとなったそう。全国3箇所をまわる巡回展として開催中で、2022年1月の「福岡アジア美術館」を皮切りに、同年7月に「岡山市立オリエント美術館」で開催。今回の「古代オリエント博物館」がラストとなっています。

ヒンドゥーの神々の物語展
東京展の会場となる「古代オリエント博物館」は、池袋サンシャインシティの開業と同時の1978年に、日本初の古代オリエント地域専門の博物館として誕生。毎年夏と秋に特別展を開催し、残りを約5000点に及ぶ所蔵品から選抜したコレクション展を行っています。展示室までの通路の壁が、古代遺跡風となっているユニークな博物館です。ちなみに入り口にある館名は、小説家の井上靖さんによるもの!

会場の様子

ヒンドゥーの神々の物語展

会場はプロローグとなる「序章」のほか、「第1章」から「第5章」まで、全部で6セクションで構成。序章のみ紀元前時代ですが、それ以外は17世紀〜21世紀のものが中心。土から始まり、布や紙、印刷、さらにデジタルと、表現する方法は変わり続けても失われることのない強い信仰心に注目です。

【 序章 】土・石・金属に見られる信仰

本展の入り口は、紀元前3500年頃から紀元後10世紀ごろまでの古代。この時代は、ヒンドゥーで登場する「○○神」という具体的な神はまだ登場しておらず、動物や魚などの自然崇拝がメインなものの、ヒンドゥーとのつながりを意識させるモチーフが見られるものも多くあったりも。ここで紹介するもの以外にも、粘土製の立体像や、ヒンドゥーの神を意識させるモチーフが施された石の印章(ハンコ)や金銀のコインといった展示品があります!

ヒンドゥーの神々の物語展
パキスタンの西、アフガニスタンの南に位置する「バローチスターン高原」で出土した土器。どの土器も厚さが薄い。写真右端の土器に描かれている(鳥と獣が融合した合成獣)グリフィンは、古代オリエント時代の遺物に多く見られるそう。●バローチスターン先史土器類/前3500年〜3000年頃/古代オリエント博物館所蔵
ヒンドゥーの神々の物語展
描かれたコブウシは南アジアに生息する背中にコブを持った牛で、ヒンドゥーで有名な「シヴァ神」の乗り物としても神聖化されているそう。●コブウシ文壺/前2200年〜2000年頃/個人蔵
ヒンドゥーの神々の物語展
先に紹介した土器と同じく、目を大きく描いている点がポイント。大きさは5〜6㎝。●コブウシ土偶/前2200年〜2000年頃/古代オリエント博物館所蔵
ヒンドゥーの神々の物語展
ヒンドゥーが体系化されるのは4〜5世紀とされ、大規模な寺院等が建立されたのもこの頃。立体的で躍動的なこの像は、この時代にすでに確立されていたという鋳造製。複数の手に武器を握った姿は、「シヴァ神」の妻である女神「パールヴァティー」の別の姿である「ドゥルガー」を具現化したものとのこと。●青銅製ドゥルガー像/9〜10世紀頃/個人蔵

【 第1章 】更紗・細密画・ガラスに見られる信仰

第1章からは一気に17世紀までジャンプ。17世紀以降は、神々を描く手法に煌びやかなアレンジ(更紗・細密画・ガラス絵・雲母絵等)が増えた時代。多様な表現方法に興味をそそられるはず。

ヒンドゥーの神々の物語展
19世紀以降になると、16〜17世紀に欧州で誕生した「ガラス絵」の技術がインドでも普及。ガラスの裏面に絵を描く、アニメのセル画のような手法で仕上げられている。●右・女性楽土に囲まれるクリシュナ/19世紀後半〜20世紀前半/福岡アジア美術館(黒田豊コレクション) ●左・笛を吹く牛飼い(クリシュナ)/19世紀後半〜20世紀前半/福岡アジア美術館(黒田豊コレクション)
ヒンドゥーの神々の物語展
「雲母(うんも)」と呼ばれる鉱物のクリア板に描く雲母絵は、ガラス絵とは違い“表”に描く。大きさは、トランプよりも2回りくらい大きい。●雲母絵/19世紀後中頃/黒田豊コレクション
ヒンドゥーの神々の物語展
「更紗(さらさ)」は木綿や絹などに模様を染めたもので、とくに「金更紗」は寺院を彩る贅沢な布(ピチュワーイー)として用いられたそう。中央の大木はマンゴーの木とのこと。●クリシュナ図描絵金更紗(ピチュワーイー)/17〜18世紀/平山郁夫シルクロード美術館

【 第2章 】民族画・刺繍・祭りに見られる信仰

第2章では、一般庶民に浸透するヒンドゥーをクローズアップ。主に女性が製作したという民族画や刺繍のほか、自由に持ち歩きできるユニークな移動式祭壇、「ミティラー画」と呼ばれる家の土壁に描いた作品などを紹介。約20年間で70回インドやネパールを訪れ、2万枚の写真を撮影した写真家の沖 守弘さん(故人)による、インドの祭りの様子をとらえた写真を楽しめます。

ヒンドゥーの神々の物語展
富の神様「ガネーシャ」のミティラー画。これは土壁ではなく紙に描かれたもの。女性が内職的に描き収入を得ていたそう。●ガネーシャ/20世紀末/黒田豊コレクション
ヒンドゥーの神々の物語展
結婚式や宗教儀礼などの特別な日に使ったとされる敷布。ほどいたサリー(民族衣装)で刺繍しており、花びらが多くある蓮の花を中心に、天地創造の物語が描かれているとのこと。●千花弁の蓮とヒンドゥーの神々/19世紀中頃/福岡アジア美術館
ヒンドゥーの神々の物語展
扉を開きながら物語を語る文化があるというインド。「カヴァド」とはその際に利用する移動式寺院で、紙芝居のようなもの。最後まで開くと、ラストにご本尊が姿を魅せる。高さは15㎝くらい。お土産としても購入できるそう。●カヴァド/20世紀後半/黒田豊コレクション
ヒンドゥーの神々の物語展
「ボンマイ・ゴル」とは、お祭りなどで使用される人形の飾り。粘土製。●ボンマイ・ゴル/20世紀後半/黒田豊コレクション

【 第3章 】書物・オレオグラフ・陶磁器に見られる信仰

欧州で生まれ発達した印刷技術が17世紀になりインドにも伝わったことや、19世紀後半に活躍したインド人画家「ラヴィ・ヴァルマー」の作品が大量に印刷物として流通することでヒンドゥーのイメージは急速に流布。第3章ではそれら印刷物、日本からインドへと輸出された、神々をモチーフとした製品などを一堂に紹介。印刷の仕組みを紹介するコーナーは必見!

ヒンドゥーの神々の物語展
従来の銅版画に変わる、多色刷りを可能とした「高級石版画(オレオグラフ)」技術を駆使し様々な印刷物が量産された20世紀前半。会場ではオレオグラフの仕組みを解説する、複数の「版」が並ぶスポットも。●海を征服するラーマ(見本刷り)/20世紀前半/黒田豊コレクション
ヒンドゥーの神々の物語展
印刷した絵のまわりに布を貼ったりした、立体的なデコレーションモデルも。●ラージャー・ラヴィ・ヴァルマー〈モーヒニー〉/20世紀前半/福岡アジア美術館
ヒンドゥーの神々の物語展
明治中期〜大正後期にかけて、マッチは日本が誇るメジャーな輸出品だったそう。味わい深いヒンドゥー画のラベル柄が複数。写真右の大きい図画は、当時の広告的なもの!? とのこと。そのほかにも、日本から輸入した陶器などの展示もあります。●日本製マッチラベル/黒田豊コレクション

【 第4章 】オレオグラフに見られる神々の信仰

第4章は、ヒンドゥーの神話に登場する、ヴィシュヌやシヴァ、女神など、様々な神をオレオグラフ印刷による宗教画でたどるエリア。耳にしたことのある神もきっと多く出会えるはず。とくにヴィシュヌは、アヴァターラー(英語のアヴァターの語源)と称する10の化身に姿を変えることができるなど、思わず「そうなんだぁ」となる作品も。個々の作品に込められたストーリーを知ると、鑑賞がもっと楽しくなるはず。

ヒンドゥーの神々の物語展
千の頭を持つ、「シェーシャ」と呼ばれる海の上に浮かぶ蛇の上で寝ていると、平安の神「ヴィシュヌ」のヘソから蓮が生え、同じく三大神の1つである創造神「ブラフマー」が生まれ・・・と、壮大な物語が凝縮。●ヴァースデーオ・H.バンディヤ〈シェーシャの上に横たわるヴィシュヌ〉/20世紀前半/福岡アジア美術館
ヒンドゥーの神々の物語展
ヒンドゥーでもっとも人気のある神とされるのが「クリシュナ」は、三大神「ヴィシュヌ」の8番目の化身。クリシュナとは、「黒」や「濃青」といった意味を持つ言葉が由来とされ、描かれる絵にもそれが反映された傾向が。●ラージャー・ラヴィ・ヴァルマー〈ラーダとクリシュナ〉/20世紀前半/福岡アジア美術館
ヒンドゥーの神々の物語展
「シヴァ」は破壊と創造の神。三大神の1つで、「舞踊の王」という別名を持つそう。左足を上げ、右足で無知な鬼を踏みつけるという構図が多い。●作者不詳〈踊るシヴァ(ナタラージャ)〉/20世紀前半/福岡アジア美術館

理解度が深まる 相関図も♪

ヒンドゥーの神々の物語展

いろいろな神が登場するため、途中で混乱する・・・なんてこともありそうですが、そんな時はこの相関図で立ち位置を確認あれ。三大神を中心に、神々の関係性などが一覧できるボードが第4章の入り口に用意されています♪ これは便利。

【 第5章 】21世紀・現代の信仰

ラストとなる第5章は現在。20世紀半ばに登場したオフセット印刷により、1枚数百円で作品が購入できるようになるなど、信仰の対象であると同時に、クリエイターのアート表現の対象としての意味合いも強まっていくヒンドゥーの神々。印刷だけでなく、映像やアニメ、漫画、さらにインターネットに代表されるデジタルメディアの普及で、ますます多様化していくヒンドゥーが紹介されます。

ヒンドゥーの神々の物語展
エリア内では、水彩画や水墨画のようなものまで、アーティスティックないろいろな作品を鑑賞できます。●アビシェーク・シン〈シヴァ(ナタラージャ)〉/2017年/作家蔵
ヒンドゥーの神々の物語展
大量生産されたヒンドゥーの神々を図柄とした、お土産屋さんなどで身近に販売されている、表現の手法として現在もっともポピュラーといえるポスターのコレクション展示も。インド人が経営するカレー屋さんなどで、見かけたことがあるのでは!?

ミュージアムショップにも行こう!

ヒンドゥーの神々の物語展

館内に入ってすぐにあるミュージアムショップでは、本展開催にあわせたアイテムを数多く取りそろえており、なかにはインドで買い付けてきたものも。ミュージアムショップのみの利用も可能とのことです。本展の理解度を深められる図録は1500円で発売中。

ヒンドゥーの神々の物語展
民族衣装の機能性に着目しつつ、使い勝手にも配慮した衣類を提案する「eofm(イオフム)」のシャツや、インド製ストール、復刻マッチなど、商品はいろいろ。ポストカードやぬいぐるみなど、イベントオリジナルグッズも多数。

ここにも注目♪

オーディオガイドあります!

オーディオガイドは手持ちのスマホを使って利用するタイプ。Pokkeアプリからのダウンロードでは610円ですが、会場で購入すると500円で利用できます! 会場購入の場合は、さらにオリジナル缶バッジのプレゼントも。スマホがない場合は端末のレンタルも可能です。ナビゲーターは関 智一さん。ドラえもんのスネ夫など、実績多数の人気声優さんです。

ちなみに音声ガイドは、自宅に帰ってからも利用可能です(2022年11月27日まで)!

関連コンテンツもいろいろ♪

期間中はギャラリーツアーや講演会、オンライン講座など、関連コンテンツも多数用意されています。体験コンテンツもあり、例えば、ガラス絵作りを体験できるワークショップやインドの古典舞踊を踊ってみる体験会など、いろいろ。詳細は公式サイトでご確認ください。

レポートまとめ♪

ヒィンドゥーの神々

●絵画を中心にヒンドゥーのイメージの変遷を追う特別展
●展示総数、大小含め500点越え!
●充実のミュージアムショップ
●関連コンテンツも多数あり

いかがでしょう!? 時代とともに変わっていく、ヒンドゥーの神々の表現法。ここまで絵画や印刷物などが集まる展示会は珍しいのでは!? 今回紹介したのは、ほんの一部。ヒンドゥーはもちろんですが、インドに興味がある方にもぜひ♪ 会期は2022年11月27日まで!

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この記事を書いた人

山さん

娘と一緒にハイキングや登山を楽しむ日を待ち望む、ただの編集者。

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