2024.05.03

特集記事

文・写真: 山さん
2023.10.15

終了しました

【生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ】 不世出の版画家の多岐に渡る創作活動を“暮らした土地”と共に巡る大回顧展 《2023.12.3まで》

棟方志功展会場

“世界のムナカタ”として、日本のみならず海外でも高く評価された、稀代の版画家・棟方志功の作品を振りかえる過去最大規模となる展覧会が始まりました。棟方の創作人生を語るうえで欠かせない3つの拠点を絡め展開する、会場の様子をレポートです!

*掲載内容は2023年10月5日開催の内覧会時点の情報で、内容を保証するものではありません。

*掲載写真はすべて編集部による。

イベント概要

⽣誕120年 棟⽅志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

撮影OK(写真のみ・一部NGあり)
展示入れ替えあり
グッズ販売あり

開催地東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー(東京都千代田区北の丸公園3-1)
開催期間2023年10月6日(金)〜12月3日(日) 
鑑賞料一般/1800円、大学生/1200円、高校生/700円
開館時間10:00〜17:00(金・土は20:00まで) *最終入館/閉館30分前まで
休館日月曜日(10月9日は開館)、10月10日(火)
主催東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション、東京新聞
アクセス東西線「竹橋駅」1b出口から徒歩3分
特設サイトhttps://www.munakata-shiko2023.jp


【⽣誕120年 棟⽅志功展】とは!?

棟方志功展ポスター

日本を代表する不世出の版画家・棟方志功(むなかた しこう/1903-1975)の旺盛な創作活動を、生前残された多数の作品とともに振り替える回顧展です。

会場となる「東京国立近代美術館」では、1959年と1985年の過去2回「棟方志功展」を開催していますが、今回はそれらを大きく上まわる過去最大規模のイベントです!

*棟方志功展としては2003-2004年に行われた巡回展「生誕百年記念展 棟方志功展」以来、本展は約20年ぶりの開催です。

最大のポイントは、本人が居住し、創作活動の拠点とした「青森」「東京」「富山」という3地域の“移動(=暮らした土地)”とからめて展開されること。

棟方志功展セクションわけ看板

創作の大きな影響を与えた、作家の“移動”と共に展開する今回の展覧会。予備知識のない方でも、比較的入りやすい内容かと思います。

主催に名を連ねる東京国立近代美術館の研究員によれば、棟方志功の作品は「時代」はもちろんですが、とりまく「環境」と、そこで出会う「人」でも大きな変化が見られるとのこと。

会場では、それぞれの時代に手掛けた(棟方が「板画」と読んだ)「版画」から(肉筆画である“やまとが”と呼ぶ)「倭画」、(“あぶらが”と呼ぶ)「油画」のほか、「本の装幀」「挿絵」「商業デザイン」など、驚くほどの幅広い創作活動をイッキに振り返ることが可能。壮大な個人史といえる作品群を、プロローグ+全4章に分け紹介する展覧会です!

青森市で鍛冶屋の息子として生を受け、独学で絵を描き始めた棟方の人生。大きな衝撃を受けたゴッホの名画「ひまわり」との出会いから、日本、そして世界で認められる版画家となり、絶え間なく作品を発表し続けた創作活動のほか、テレビ、ラジオといったメディアへ出演した際の貴重映像等も公開と、幅広くフォーカスします。

棟方志功展展示風景

入館後まず目にするプロローグエリアでは、棟方の創作活動の原点ともなった、雑誌「白樺」(第12巻第2号1921年発行)に掲載されたゴッホ「ひまわり」のカラー画も展示されています。若き日のポートレートと共に。

棟方をあまり知らない方でも、「これは見たことがある!」という作品もきっとあると思いますし、展示品の幅がかなり広いため、美術展慣れされていない方でも楽しめるのではと思います。

棟方志功展会場

展示作品は膨大なもので、小さいものは絵ハガキクラス、大きなものは公共建築に掲げられた数mに及ぶ巨大な壁画(板画)、さらに屏風と、バラエティに富んだ作品群を楽しめます。

棟方志功作品

《雪国風景図》1924年 青森県立美術館

油彩画を目指していた、創作活動初期の作品。「青森」時代の終盤期に描かれた。こちらもプロローグエリアに展示。

【第1章】東京の青森人

第1章では、1924年21歳で上京した棟方の、創作活動に影響を与えた友人の存在や、民藝運動の主導者との出会い等、棟方を取り巻く人間関係を紹介。

1928年頃から作品の制作を「版画」を主とするようになった棟方は、自ら版画と「板画(はんが)」と名付けつつ、黒×白の木版画等を多数制作。文学者との交流から、装幀や挿絵の仕事も盛んに行ったそう。

その時代の活動の中心であり、最終的に定住の地となった初期の「東京時代」を紹介。ちなみに装幀に代表される「本の仕事」は、初期から晩年まで、棟方が生涯に渡り携わったジャンルの1つです。

棟方志功作品

《星座の花嫁》貴女行路 1928-1930年 南砺市立福光美術館

1931年に刊行された版画集「星座の花嫁」に収録された作品。多色摺りによる色彩もさることながら、作品を取り囲む、棟方の言葉のセンスに注目。「先を行く人 じゃまです」なんていう文字も。

棟方志功作品

《観音経曼荼羅》 1938年 日本民藝館

棟方版画(板画)の特徴の1つである、“裏彩色”と呼ばれる裏面から着色した作品。彩色で変化を付けることを前提に制作した作品とのこと。

棟方志功作品

《門舞男女神人頌》 1941年 個人蔵

古事記に登場する16人の神々を、面と線で平面的に制作した版画。じっくり見ると、1枚の版木を表裏使って仕上げていることに気が付くはず。「馬鹿げた大きさ」を望んで仕上げたという逸話も。

棟方志功作品

《幾利壽當頌耶蘇十二使徒屏風》 1953年 五島美術館

東京国立近代美術館では、じつに60年ぶりの公開という高さ3m×幅1.8mの巨大な作品は、キリスト教の12使徒が題材。屏風は横に長いイメージがありますが、縦長となったのは、出展した「第9回日展」に“作品の幅は1.8m”という規定があったからなんだそう。

【第2章】暮らし・信仰・風土 ー富山・福光

第二次世界大戦末期の1945年4月に、東京空襲を避けるため、棟方は一家で富山県の福光町(現・南砺市)に疎開。疎開先では版画(板画)の元となる版木の入手が難しくなったこともあり、次第に“書(筆)”の仕事が増えていきます。

第2章ではその疎開時代に制作した、「倭画(やまとが)」と読んだ肉筆画(筆を使った画)や「書」にも焦点を当てつつ、困難な環境下でも絶えず続けていた版画作品を紹介。版画の堀り方にも変化が見られた特筆すべき時代です。

棟方志功作品

《慈潤》 1945年 日本民藝館

民藝運動を主導し、美術評論家としても活躍。日本民藝館を創設したことでも知られる柳宗悦(やなぎ むねよし)の依頼によりしたためた書。掛け軸の表具の仕立ては柳自身が行ったとのこと。

*展示は前期(〜11月12日)まで

棟方志功作品

《華厳松》 1944年 躅飛山光徳寺

疎開先にあった「光徳寺」の依頼で描かれたふすま絵。当初は実際に開閉させるなど、建具として使用していたそうですが、現在は寺内にある展示室で公開されているとのこと。門外不出ともいえる大作で、寺以外で鑑賞できるのは極めて稀とのこと。必見です!

棟方志功作品

《道祖土頌》 1950年 棟方志功記念館

疎開時代の版画では作風に変化が見られた棟方。彫刻刀のラインを残し、体の動きが分かるような作品を残しており、写真の作品は、彫った線だけで12体の像を表現。黒地に白い線を掘る特徴が良くわかるはず。

棟方志功作品

実際に使用された貴重な版木の展示も。写真の《版木 絣の柵》(棟方志功記念館所蔵)は《道祖土頌》の1つ。*展示は前期(〜11月12日)まで 

【第3章】東京/青森の国際人

1951年、6年8ヶ月を過ごした疎開先から再び東京へ戻った棟方が、「世界のムナカタ」と呼ばれるようになるなど、国内外で知名度を上げた時期にスポットを当てる第3章。

1952年にスイスの版画展で、1955年にブラジル・サンパウロの美術展で、1956年にヴェネチアの美術展で立て続けにアワードを受賞するなど、世界での評価を高めた棟方。日本国内では、装幀や挿絵を手掛けた谷崎潤一郎の「鍵」がベストセラーとなったことで本の仕事が急増し、1950年代末期から始まる建設ラッシュにあわせ増えていった公共建築用の作品制作など、多忙を極めた時期でした。

故郷「青森」に回帰した作品制作に尽力するのは、1960年代あたりから。ちなみに棟方は青森市初の名誉市民でもあるんです(1969年認定)。

棟方志功作品

《弁財天妃の柵》 1965年(1974年摺) 棟方志功記念館

棟方作品として広く知られている、“大きなめ目と小さな口を持つ、ふっくらとした女性”に代表される、「大首絵」と称されるバストアップの美人画は、1970年代以降の晩年期にとく制作が急増しているそう。紹介の作品は、1982年に「近代美術シリーズ第14集」として記念切手として発売されるなど、とくに認知度が高い作品。棟方といえばこの作品! という方も多いのでは!?

棟方志功作品

包装紙やお店の紙袋なども多数手掛けており、その一例も特設コーナーで展示。棟方は頼まれると断れない性格だったようで、気軽になんでも制作を引き受けたとのこと。

棟方志功作品

《ホイットマン詩集抜粋の柵》 1959年(一部1961年摺) 棟方志功記念館

1959年初頭ロックフェラー財団等の招きで渡米し、同年11月の帰国まで、アメリカ各地で展覧会や大学で講義を行いつつヨーロッパ各国にも足を運んだ棟方が、アメリカの詩人「ウォルト・ホイットマン」の詩集「草の葉」から抜粋して制作。日本語のカナではなく、英字の版画(板画)という点も珍しい。

棟方志功作品

《花矢の柵》 1961年 青森県立美術館

青森県新庁舎竣工にあわせ制作された巨大壁画。正面入り口を飾る作品として制作されたもので、棟方板画としては初の壁画作品とのこと。縦約250㎝×横約710㎝に及ぶ大作。現在は青森県立美術館に収蔵されています。

棟方志功作品

《棟方デザイン浴衣 陸奥新報ねぶた浴衣》 1971年 個人蔵

青森弘前市に本社がある「陸奥新報社」の依頼で制作した浴衣は、陸奥のMがモチーフとなっている同社の社章を盛り込みつつ、アイヌ文様を連想させる大胆なデザインに挑戦。

【第4章】生き続けるムナカタ・イメージ

最終章となる第4章では、棟方志功本人をフォーカス。多くの自画像を制作し、自叙伝も複数冊執筆。写真家の被写体としても魅力に富んだ人でした。世間一般が持つ棟方のイメージは、それらが元となっている部分も多いようです。

写真だけでなく、制作風景や話す姿などは映像として記録されるなど、“映像の時代の芸術家”とも言われる棟方に対するイメージを、貴重な作品と愛用品、映像資料で振り返ります。

棟方志功作品

右《雄華山房主人図像図》 1942年 青森県立美術館
左《自画像》 1964年 (公)岡田文化財団パラミタミュージアム

棟方は油画、倭画、版画と様々な手法で、多くの自画像を残しており、会場にはその一部も。トレードマークでる丸眼鏡で自画像と分かるはず。

棟方志功作品

《折り畳み眼鏡》 個人像

極度の近眼で、1960年秋頃には左目が失明状態だった棟方が実際に着用した眼鏡や、視力を補うために使っていた双眼鏡、さらに愛用したカメラ「オリンパス・ペン」なども展示。棟方は写真撮影が好きだったそう。

棟方志功作品

《彫刻刀》《筆》 個人像

戦後、学校教育の一環として版画が推奨されたこともあり、日本は版画人口が多いそう。棟方モデルを希望するニーズもあったようで、本人命名の彫刻刀「日本板画院推奨 世界彫刻刀」も登場。

展示入れ替えあります

本展は前期(10月6日〜11月12日)、後期(11月14日〜12月3日)の二部構成となっており、20点あまりが入れ替わります。ご注意ください。

音声ガイドには・・・

棟方志功作品

展覧会をより深く、じっくり楽しむうえで欠かせない音声ガイドももちろんあります!

メインナビゲーターは声優の細谷佳正さんが担当されますが、途中いくつかのコーナーでは芸人「阿佐ヶ谷姉妹」も登場。ボーナストラックとして本展の主任研究員のインタビューも収録されています。■解説時間/30分、650円

【詳細はコチラ】https://www.munakata-shiko2023.jp/voice.html

ミュージアムショップも

棟方志功作品

展示室ラストには各種グッズが手に入るショップコーナーも。大小様々なグッズが用意されており、文具やハンコなども。大半が今回の展示会のために製作したオリジナルとのこと。

購入は展覧会入場者のみです!

*公式図録のみ通信販売でも購入可能

【詳細はコチラ】https://www.munakata-shiko2023.jp/goods.html

レポートまとめ♪

棟方志功展ポスター

・「世界のムナカタ」を“暮らした土地”と共に追体験
・作品&資料等、展示総数、過去最大規模
・遺品や貴重映像等の紹介も

いかがでしょう!? 棟方志功の、驚くほど幅広い芸術活動を垣間見れる貴重な展覧会。展覧会や美術展には縁遠く・・・という方でも楽しめる、バラエティに富んだ展示物は必見です。版画ならではの独特な仕上がりや構図、デザインは、グラフィックに興味のある方にはとくに刺激となるのでは。ぜひ足をお運びくださいませ。

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この記事を書いた人

山さん

娘と一緒にハイキングや登山を楽しむ日を待ち望む、ただの編集者。

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