2025.03.17

特集記事

文・写真: 山さん
2025.02.16

エミール・ガレ展、六本木のサントリー美術館で開幕! 関連資料含む110点で没後120年を回顧

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

ガラスや陶器製品、家具などで、類い稀な功績をのこした、フランスが生んだ芸術家、エミール・ガレの、没後120年にあわせた特別展がいよいよ六本木に上陸! 早速会場を覗いてきました!

*掲載情報は2025年2月14日開催の内覧会時点の情報で、内容を保証するものではありません。

*掲載写真はすべて編集部による。

イベント概要

『没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ』

展示替えあり
撮影OK(写真のみ/11時以降)
音声ガイドあり
関連イベントあり
グッズ販売あり

所在地サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F)
開催期間2025年2月15日(土)~4月13日(日)
開館時間10:00~18:00 *入館は閉館30分前まで *金曜、特定日は20:00まで
入館料【一般】1700円、【大学・高校生】1000円、【中学生以下】無料
休館日火曜 *4月8日は開館
最寄り駅大江戸線「六本木駅」8番出口より直結
主催サントリー美術館
告知サイトhttps://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2025_1/

【エミール・ガレ:憧憬のパリ】とは!?

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

フランスが生んだ、世界的なガラス工芸家であり陶芸家、兼家具作家として大きな功績を残した、エミール・ガレ(1846-1904)の足跡を貴重な作品群とともに辿る大規模回顧展です。

フランスの北東部に位置する、ロレーヌ地方にあるナンシー*という町で実父が営んでいた、高級ガラス・陶磁器の製造卸販売業を引き継ぐ形でスタートしたガレの芸術家活動ですが、今回のイベントではそのうち、ガレの名を強く印象づけるうえで重要なポイントとなった、「パリ」との関連性にフォーカスして展開されます。

*パリの東280㎞付近にある古い町で、列車で約2時間程度の距離

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《エミール・ガレの肖像》1889年/サントリー美術館

ガレの製品は、当初から富裕層に向けたものでしたが、工房は故郷ナンシーに置きつつ、販売自体はパリにお店を構えるほかのお店に任せるという代理店スタイルをとり、自身のお店は持たなかったそう。

同時に、「パリ万博」と飛ばれる国際的知名度の高いイベントにも熱心に作品を出品し、ブランド認知拡大に尽力。うち、1878年/1889年/1900年にはアワードを受賞と高い評価を獲得。富裕層が集うパリの社交界とのつながりも次第に深くなるなど、更なる発展を遂げつつありました。しかし、成功によるジレンマや重圧に耐えられず白血病を発症。1904年に58歳の若さで亡くなります。

今回のイベントでは、そんな「ガレ」と「パリ」との関係性を示すバラエティに富んだ作品群と、貴重な史料等を数多く展示し回顧します。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

本展はじつは巡回展。「富山市ガラス美術館」で2024年11月2日~2025年1月26日にかけて開催された展覧会の東京会場展となり、東京展を主催するサントリー美術館所蔵品のほか、大一美術館、ポーラ美術館、国立工芸館、個人所蔵のほか、フランスのパリ装飾美術館が持つ優品11点を含む、総勢110点*が集います。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

ちなみにサントリー美術館は、ガレのコレクションの充実度でも国内でも有数であり、110点のうちじつに67点が同館所蔵品なんです。回顧展では、2023年にコレクションに加えたばかりの、パリで販売代理店を務めた業者(デグベルス家)に伝わる資料も初公開されます。

余談ですが、サントリー美術館で「ガレ展」を開催するのは2016年以来、9年ぶりとのこと。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

会場は3Fで受付したあと、4Fへ上がり、その後順路に沿って3Fへおりるというユニークな2フロア構成。吹きぬけ部を利用した、特長的な垂れ幕装飾もこだわりとのこと。

見応え充分な多彩な展示品

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

回顧展はプロローグからスタート。1864年から父親が営む家業を手伝い始めた頃を導入とし、第1章から第3章までは、ガレを語るうえではずせない「パリ万博」との関わりを様々な作品とともフォーカス。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

章と章の合間には、実際にガレ製品を販売した代理店との関わりが色濃い作品や資料のほか、成功とともに深まるパリ社交界との交流により生まれた作品をコラム的に紹介。

ラストを飾るエピローグでは晩年の集大成といえる作品をと、テンポ良く展開されます。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《花器「鯉」》1878年/大一美術館

本展の見所の1つは、展示品のバラエティさ。形状はもちろんですが、色彩鮮やかな作品も数多いなど、鑑賞者を飽きさせない作品が紹介されています。写真の「鯉」は、葛飾北斎の画集「北斎漫画」の一遍からヒントを得たもの。当時大流行した、ジャポニズムと呼ばれる日本ブームの影響下で生まれた作品だそう。

淡い水色の発色が特長の、「月光色ガラス」という特殊ガラスで作られている。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《栓付瓶「蝙蝠・芥子」》1892年/サントリー美術館

制品作りにおいて、様々な製法や技法を駆使し、独創性・創造性溢れる作品を生み出し続けたガレ。会場ではそれら技法を紹介する興味深いパネル展示があり、これがまた必見。

思わず「へぇ」となる、言われて気が付く様々な技が駆使されているんです。

写真の《栓付瓶「蝙蝠・芥子」》は、ロベール・ド・モンテスキウの詩集「蝙蝠」の刊行を記念して制作されたもの。黒色ガラスの色もさることながら、詩の一部が作品に刻まれていたり……。じっくりご覧あれ。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《ガレ直筆メッセージカード》1890年代初頭/サントリー美術館

作品以外にも貴重な文献資料も複数展示中。写真のメッセージカードに至っては、なんと材質が「木」。カード上部に蝙蝠を寄せ木細工(!)で表現と、驚くべきこだわりが垣間見れる資料も。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

中央《飾棚「森」》1900年頃/サントリー美術館

ガレといえばガラスや陶器のイメージが強いかもしれませんが、じつは家具の世界でも多大な功績を残しているんです。会場にはテーブルや棚などの家具作品も複数展示中。必見です!

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《花器「ジャンヌ・ダルク」》1889年/大一美術館

ガレ作品の多くはガラスや陶器など、いわゆる立体モノ。表面だけでなく、側面、裏面と、装飾の仕方にもそれぞれ工夫が凝らされています。

会場では多くの作品の展示が、周囲をグルッと回れる島のようなタイプとなっています。正面だけでなく、ぜひいろいろな角度からお楽しみあれ。写真の《花器「ジャンヌ・ダルク」》も、場所により使い分けた彫刻技法(エングレービング)の特長が判りやすく、作品に没入しやすい。光の当たり方でも表情が違って見えるはず。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

作品の周囲を回れる「島」展示の多さは、鑑賞する側にとっても好都合です!

5つのエリア+コラム!

紹介する展示品はごく一部。音声ガイド*(600円)を活用しつつ、ぜひ会場で本物をお確かめあれ。

*ガイドは、落ち着いた声で多くのナレーション等を行っている斉藤茂一さんが担当。約30分

【注意】会場内、写真に限り撮影可能となっていますが、朝10時〜11時まではサイレントタイム。静かな空間でじっくり作品に向き合ってもらうため、この時間は会話はもちろん、撮影もNGです。

プロローグ

家業を継いだガレですが、じつは実父も、結婚を機に妻の実家が営んでいたクリスタル製品と陶器を扱う店を継いだ身だったそう。

余談ですが、父は「磁器装飾職人」、息子のガレは「装飾芸術家」と呼ばれることがありますが、じつはここには大きな違いが。

担当学芸員によると、父は実際に自ら作品を制作した職人だった反面、ガレ自身はどちらかといってプロデューサー的な立場の人だったとのこと。つまり制作実務は専門の職人が行い、作品のコンセプトを練り指示を出し、監督する立場。

世間一般で考えられるアーティストとは、ニュアンスが違うんです。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《蓋付コンポート》1870年代/ポーラ美術館

第一章

1878年の「パリ万博」で正式に国際デビューしたガレ。1884年の「第8回 装飾美術中央連合展」では、自社の製品がいかに優れているか、ポイントを書き綴った詳細な解説書と共に出展するなど、制品のアピールに余念がなかったそう。

仕事に熱意と野望を持って取り組んでいた、初期のガレ。この頃は無色透明のガラスに、装飾を施す作品を多く残しているとのこと。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《脚付杯「四季」》1878年/パリ装飾美術館 Paris,musée des Arts décoratifs

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《獅子頭「日本の怪獣の頭」》1876-84年頃/国立工芸館

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《花器「葡萄畑のエスカルゴ」》1884年/パリ装飾美術館 Paris,musée des Arts décoratifs

第二章

1889年の「パリ万博」に、ガラス作品で300、陶器で200、家具で17と、膨大な数で挑んだガレは、グランプリや金賞、銀賞受賞を、華々しい成功を獲得と、躍進を遂げます。

その時代に発表された、創作意欲旺盛な時期の作品が多数紹介されます。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《花器「マグノリア」》1889年/パリ装飾美術館 Paris,musée des Arts décoratifs

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《モスクランプ風花器「蝙蝠・唐草」》1889年/サントリー美術館(菊地コレクション)

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《花器「好かれる心配」》1889年/大一美術館

第三章

パリの繁栄は地方になんの恩恵も生まないなど、都市と地方の軋轢が顕著となっていた1900年頃。ガレは不満を声にした地方の1つであるナンシーの市民である一方で、パリではフランスを代表する装飾芸術家としての名声を確立するなど、そのジレンマに苦しみ、次第に病んでいったそう。

そんな時期に開催された「パリ万博」。第三章ではガラスと家具の2部門でグランプリを獲得と、もっとも脂がのりきった時代の作品を中心に紹介します。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《昼顔形花器「蛾」》1900年/サントリー美術館

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《花器「カトレア」》1900年頃/サントリー美術館

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《木の葉形トレイ「アイリス」》1890-1900年/サントリー美術館(菊地コレクション)

エピローグ

1901頃から病の深刻度が増し治療を繰り返すようになったガレは、大成功となった1900年の「パリ万博」から、わずか4年後の1904年9月23日に白血病でなくなります。

プロデューサーを失ったガレ商会は、その後世界恐慌のあおりもあり1930年に閉鎖。翌年溶解炉も停止され、1936年に閉鎖されています。

回顧展を締めくくる最終章は、ガレ最後の4年間に発表された作品を紹介。 展示数こそ少ないエリアですが、実際に会場を訪れた印象では、見応えのある作品がもっと多い印象に強いエリアです。

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《花器「海馬」》1901年/パリ装飾美術館 Paris,musée des Arts décoratifs

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《脚付杯「蜻蛉」》1903-1904年/サントリー美術館

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

《ランプ「ひとよ茸」》1902年頃/サントリー美術館

展覧会のメインビジュアルに採用されている《ひとよ茸》は、晩年に制作を始めたというランプは、電球が普及しはじめた当時、最先端のインテリアだったそう。実際に“点灯”させた状態で展示させるのは、サントリー美術館としても久しぶりとのこと。

ちなみに、《ひとよ茸》の展示は東京会場のみとなっています! グルッと回っていろいろな角度かお楽しみあれ。

展示替えあり!

作品保護の観点から、3月19日に一部作品を変更する「展示替え」があり、直筆の書を変更するほか、関連小冊子の展開ページの変更を行います。そのため3月18日は休館。ご注意を。

レポートまとめ♪

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

・ガラス、陶器、家具界の名匠ガレの回顧展
・実作品&関連資料が110点集う
・名声を確立したパリとの関係を中心にフォーカス

形状、色彩、デザインと、個性豊かな作品が揃った、見応え充分な今回の展覧会。ガレは1つの作品を複数個制作するなど、作品を量産した人物として知られており、担当学芸員によると生涯で発表した作品総数も不明なんだとか。もしかしたら、今後新たな作品が発見されるなんてこともありえるかも!? これを機に、ガレを知り、ファンになって注目してはいかがでしょう!?

エミールガレ 憧憬のパリ サントリー美術館

もっと深くガレを知りたい! という方は展示作品等の情報が詳細に掲載されている図録をどーぞ! 展覧会入場有無に関わらず、どなたでも購入可能です。

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