2024.11.23

特集記事

文・写真: 山さん
2023.10.20

終了しました

【ゴッホと静物画 伝統から革新へ】 17世紀から20世紀初頭までの静物画の流れを、ゴッホ作品と、その時代に生きた画家たちの作品と共に振り返る展覧会が新宿で! 《2024.1.21まで》

ゴッホと静物画会場

絵画について詳しくなくても、《ゴッホ》の名前や《ひまわり》という作品についてはなんとなく記憶にあるという方もきっと多いかと思いますが、そんな名画家や名画の作品がズラリ揃う展覧会が新宿でスタート。テーマは“静物画”。会場の様子をお届けします!

*掲載内容は2023年10月17日開催の内覧会時点の情報で、内容を保証するものではありません。

*掲載写真はすべて編集部による。

イベント概要

ゴッホと静物画 伝統と革新へ

撮影OK(写真のみ・一部NGあり)
グッズ販売あり

開催地SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)
開催期間2023年10月17日(火)〜2024年1月21日(日) 
鑑賞料(日時指定券)一般/1800円、大学生/1100円、高校生以下/無料
開館時間10:00〜18:00(11月17日、12月8日は20:00閉館) *最終入館/閉館30分前まで
休館日月曜日、年末年始(12月28日〜1月3日) *1月8日は開館
主催SOMPO美術館、NHK、NHKプロモーション、日本経済新聞社
アクセスJR「新宿駅」西口より徒歩5分
特設サイトhttps://gogh2023.exhn.jp


【ゴッホと静物画 伝統と革新へ】とは!?

ゴッホと静物画ポスター

新宿駅・西口から徒歩圏内の好立地にある「SOMPO美術館」で始まった美術展です!

「SOMPO美術館」といえば、オランダ出身の著名画家であり、日本でもファンが多いフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の名画中の名画、《ひまわり》を所蔵していることでも全国的に知られる美術館です。アジアで《ひまわり》が鑑賞できるのは「SOMPO美術館」だけなんです!

ゴッホと静物画会場

SOMPO美術館は、1976年に安田火災海上本社ビル(現損保ジャパン本社ビル)の42Fに誕生した日本初の高層美術館でしたが、2020年からは現在の6Fからなる独自の建物で運営。末広がりの損保ジャパン本社ビルの真横です(矢印)。

美術に疎くても、ゴッホをあまり知らなくても、“ゴッホといえば、ひまわり”という方は極めて多いと思いますが、その《ひまわり》を所蔵している美術館で開催されるイベントです。当然《ひまわり》の展示はあり。それだけでも興味、沸きますよね!

ゴッホと静物画作品

《ひまわり》 1888年11月〜12月 フィンセント・ファン・ゴッホ SOMPO美術館

本展のハイライトの1つである《ひまわり》。ゴッホは《ひまわり》を6点、または12点の連作として制作する予定だったそう。同美術館が所蔵する作品は、ロンドンにあるナショナルギャラリーが所蔵する《ひまわり》を元に描いた、同じ構図、同じ黄色の作品ですが、絵の具を厚く塗るなど、色彩や雰囲気は似て非なるもの。

今回の展覧会は、ゴッホを中心とした大型企画展としては、2003年以来なんと20年ぶりとのこと。テーマである“静物画”とは、“動かない”モノを対象とした絵画のジャンル。

動かないモノとは・・・、花をはじめとした植物であり、果物などの食べ物であり、食器などの日用品でありとじつに様々。死んだ獲物や屍体、骨、剥製なども、静物画のカテゴリー内に属するなど、極めて幅広いジャンルです。この静物画が1カテゴリーとして、西洋美術で確立されたのは17世紀頃といわれているそう。

今回の展覧会では、その17世紀から20世紀初頭にかけての静物画の流れを独自の視点でひも解く企画展。主役となるゴッホが先人たちである先輩画家からどんなインスピレーションを受け、自身の作品に反映し、次の絵画界を担った後輩たちにどんな影響を与えたのかを紹介します。

ゴッホと静物画会場

会場は3セクションに分かれており、建物内を5F→4F→3Fと段階的に下って鑑賞する、ほかの美術館にはない独特な展開となります。ちなみに導線は一応ありますが、エリアを前後したり、往復などしても問題ないとのこと。上りはエレベーター、下りは階段が基本ですが、下りもエレベーターを使って問題ありません。

紹介点数は、ゴッホ作品が25点。それ以外の画家の作品が44点の合計69点。SOMPO美術館所蔵品はもちろん、国内外の美術館等から集めた静物画の名画がズラリ。ゴッホ美術の殿堂、オランダにある「ファン・ゴッホ美術館」からやってきた作品もあります。

気になるのはゴッホ以外の画家か!? ということかと思いますが、例えばそれは・・・モネやピサロやルノワール、セザンヌなど、ビッグネームばかり! ゴッホ史を語るうえではずせないゴーギャンの作品もありますヨ。

ちなみにゴッホは37年の短い生涯でしたが、画家人生でおよそ850点の油絵を描き、そのうち190点あまりが静物画とのことです。

ゴッホと静物画会場

各フロアは大型美術館ほど広くはありませんが、例えば《ひまわり》の前にソファがあるなど、自分のペースでゆったり鑑賞可能です。展覧会をより深く楽しむ、音声ガイドもあります。レンタルヘッドフォン式で1台600円。ナビゲーターは人気声優の福山潤さんが担当。

展示作品の多くが撮影可能!

撮影禁止注意事項

展示作品全69点のうち、一部を除き、多くの作品が写真撮影OK(動画はNG)とのことです! お気に入りの作品をスマホの壁紙などにしてはいかが!? フラッシュ等はもちろん禁止。ルールを守ってお楽しみあれ。

【第1章】伝統

ゴッホと静物画作品

《麦わら帽子のある静物》 1881年11月下旬〜12月中旬 フィンセント・ファン・ゴッホ クレラー=ミュラー美術館

5Fフロアから始まる第1章は、静物画がカテゴリーとして認知し始める1600年代の17世紀から、ゴッホ自身も静物画を作品として残す1800年代末期までの19世紀を約3世紀を俯瞰して紹介。

静物画といえば、花や果物などを連想する方も多いかとか思いますが、会場には《ひまわり》のイメージが強いゴッホからはちょっと想像しがたい、意外な作品も複数紹介されるなど、第1章から興味深い作品が続きます!

ゴッホと静物画作品

《髑髏》 1887年5月 フィンセント・ファン・ゴッホ ファン・ゴッホ美術館

この髑髏(どくろ)の作品はなんとゴッホによるもの。静物画の対象として髑髏が描かれることがあるそうですが、ゴッホ自身が髑髏も題材にしていたとは! なんでも確認されているだけでも3点髑髏作品があり、こちらはその1点。会場にはそのほかにもコウモリを描いた作品も紹介されていますのでお見逃しなく!

*ゴッホが描いたコウモリは「剥製」を題材としており、静物画に属するとのこと。

ゴッホと静物画作品

《野牡丹とばらのある静物》 1886年-1887年 フィンセント・ファン・ゴッホ クレラー=ミュラー美術館

19世紀後半当時のゴッホの画風からすると、“らしからぬ”要素が多いとして、長くゴッホ作品か否か問われていたという注目作。2010年に行った最新のスキャニング技術などにより、現在ではゴッホ作品として認知されているとのことですが、その理由等は音声ガイド、もしくは図録でご確認を!

ゴッホと静物画作品

《丸太作りの植木鉢と花》 1876年 カミーユ・ピサロ 松岡美術館

面倒見が良く温和な性格で、ゴッホにも教えたとされるピサロは、生涯作品数はなんと1300点以上。うち静物画は20点あまりと極端に少なく、うち「花」がテーマとなっているのは僅か14点しか確認されておらず、会場にはその稀少な1点が。

【第2章】花の静物画

ゴッホと静物画作品

《アイリス》 1890年5月 フィンセント・ファン・ゴッホ ファン・ゴッホ美術館

静物画のテーマとして「花」を、伝統的、宗教的、賛美的に描く様になった17世紀。ゴッホ自身はパリに移るまで、数点しか「花」の作品を残していなかったそう。1886年〜1887年のパリ滞在中に「花」作品が激増し、それまで僅か5点だったものが、僅か2年で45点あまりも量産。19世紀中頃のパリでは、わかりやすい風景画や静物画が好まれていた時代で、「花」は“売れる”テーマだったことが理由の1つとか。

4Fで展開される第2部では、そんな「花」を題材とした作品をフォーカス。名画《ひまわり》、そして《アイリス》が見れるのもこのセクションです! そのほかの画家たちによる、「ひまわりの花」にテーマとした作品群も見所です。

ゴッホと静物画作品

《太陽と月の花》 1889年 ジョージ・ダンロップ・レスリー ギルドホール・アート・ギャラリー

挿絵も手掛けるなど、風俗画家として活躍したレスリーの写実的な作品は、会場でも一際目立っていた印象。少女が花瓶にひまわりをいけようとしているシーンです。

ゴッホと静物画作品

《白いシャクヤクとその他の花のある静物》 1880年頃 エドゥアール・マネ ボイマンス・ファン・ブーニンヘン美術館

ゴッホの名画《黄色い背景の黄色いひまわり》にも影響を与えたと想像される、“明色の上に明色を重ねた”ような、マネのシンプルな技法が垣間見れる作品。ゴッホが高く評価していたマネは、“印象派の父”とも呼ばれているそう。

ゴッホと静物画作品

《グラジオラス》 1881年 クロード・モネ ポーラ美術館

モネの作品で「花」を主役とした静物画は珍しい。2つの《グラジオラス》は、当時パリで活躍した有力画商の依頼で、邸宅の装飾パネルとして制作されたもの。“壺に一輪”という構図が日本美術にも通じるものがあるそう。

【第3章】革新

ゴッホと静物画作品

《靴》 1886年9月〜11月 フィンセント・ファン・ゴッホ ファン・ゴッホ美術館

最後のフロアとなる第3部では、19世紀後半のフランス・パリで起こったムーブメントであり、見たままを、あるがままに写す「印象派」の考え方に疑問を抱き、画家自身のインスピレーションや主観を重視した作品を描き始める時代をフォーカス。

ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌに代表される「ポスト印象派」と呼ばれる画家たちの、固定観念に縛られない自由なスタイルを堪能あれ。

ゴッホと静物画作品

《水差し、皿、柑橘類のある静物》 1887年2月〜3月 フィンセント・ファン・ゴッホ ファン・ゴッホ美術館

画家の意志で自由に配置や組み合わせを変更できる、食卓や台所をテーマとした“卓上静物”と呼ばれる作品も繰り返し描いたゴッホ。奥行き感が薄い、二次元的な手法にも注目を。

ゴッホと静物画作品

《ウルビノ壺のある静物》 1872年〜1873年 ポール・セザンヌ 上原美術館

印象主義に疑問を抱き、次第に自分独自の手法で作品を描くようになったセザンヌ。作品は同時代を生きたピサロと共に、絵画に対し理解があり、画家たちとの交流もあったガシェという医師宅に滞在しているに描かれたもの。聞き慣れない「ウルビノ壺」とは、イタリア中部の山間部にある「ウルビーノ地区」で生産された陶器のこと。

ゴッホと静物画作品

《ばらと彫像のある静物》 1889年 ポール・ゴーギャン ランス美術館

「黄色い家」で共同生活を送り、諸説ある「耳切り事件」とも関連が深いゴーギャン。作品は2人の関係破綻から1年後に、フランス・ブルターニュにある宿に滞在した際、その食堂の壁を飾るために描かれた作品のうちの1点。

ミュージアムショップ&カフェも♪

SOMPO美術館物販エリア

ショップエリアは心地良い日差しが差し込む、開放的な空間。木材を使った高さ5mの天井にもご注目あれ。

SOMPO美術館の代名詞ともなっている、ゴッホの《ひまわり》関連商品のほか、展覧会関連グッズも複数揃えるショップコーナーが2Fに。隣接するカフェとあわせ、このエリアは展覧会の入館に関わらず、どなたでも利用可能です!

展覧会限定商品として、クリアファイルやマスキングテープ、ポストカードなどを用意。通常販売しているものとは図柄が異なる限定品。ゴッホの《アイリス》関連の商品も揃えているとのこと。詳細はスタッフに直接ご確認あれ。

*支払いは現金。カード、交通系ICのみ。○○payなどは使えません。

レポートまとめ♪

ゴッホと静物画バナー

・ゴッホを中心とした「静物画」の時代を振り返る20年ぶりの展覧会
・ゴッホ作品25点、そのほか44点の合計69点紹介。もちろん《ひまわり》も
・一部を除き、写真撮影が可能!

いかがしょう!? 普段なかなか美術館や展覧会に行かない方にもオススメしたいこのイベント。予備知識がなくてもOK。作品から感じるものは人それぞれ。館内は美術展特有の静粛なムードに包まれてはいますが、身構える必要なんてありません! ラフにお楽しみあれ。ゴッホの《ひまわり》や《アイリス》といった名画を見るだけでも、大きな価値がありますヨ。高校生以下は無料。はじめての美術鑑賞に親子で訪れては!?

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山さん

娘と一緒にハイキングや登山を楽しむ日を待ち望む、ただの編集者。

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