2026.07.13

特集記事

文・写真: 山さん
2026.07.12

版画界の巨人、レンブラントを回顧する話題展、開幕。約130点が上野の国立西洋美術館に集結!

版画家レンブラント展 会場風景

17世紀を代表する存在であり、現在まで多くの芸術家に多大な影響を与え続けているレンブラントが手掛けた「版画」を、様々な角度からひも解く企画展が上野で開幕で! 《2026.9.23まで》

*掲載情報は2026年7月6日開催の内覧会時点の情報で、内容を保証するものではありません。

*掲載写真はすべて編集部による。

イベント概要

『版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト』

グッズ販売あり
撮影OK(写真のみ)

会場国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
開催期間2026年7月7日(火)〜9月23日(水・祝)
開館時間【月〜木】9:30~17:30、【金〜土】9:30〜20:00 *最終入館/閉館30分前
入館料【一般】2200円 【大学生】1300円 【高校生】1000円
定休日月曜、7月21日 ただし7月20日、8月10日、9月21日は開館
行き方JR線「上野駅」公園口より徒歩2分
主催国立西洋美術館、レンブラント・ハウス美術館、朝日新聞社
公式サイトhttps://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2026rembrandt.html

【版画家レンブラント】とは!?

版画家レンブラント展 入り口ゲート

17世紀のオランダを代表する芸術家であり、その後に登場した多くの芸術家を魅了。いまなお色褪せない魅力を放つ、レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン(1606-1669)の偉業を振り返る回顧展です。

版画家として多大な功績を残したことで知られるレンブラントは、複数ある版画手法のうち、“エッチング”と呼ばれる腐食銅版画の世界広くその名を知られる存在で、アプローチの仕方から素材まで、実験的な試みを繰り返しながらその可能性を探り続け、多彩な線描表現を極めました。

関係者によれば、確認されているだけで314点の作品を遺したという、その道のパイオニアなんです。

版画家レンブラント展 自画像

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《自画像、口を開けた顔》 1630年/レンブラント・ハウス美術館

そもそも“エッチング”とは、版となる金属板に直接図柄を彫り込んでいく“エングレービング”とは似て非なるもの。

金属板の表面に、グラウンドと呼ばれる膜を塗り、その上からひっかくように図柄を描くことで、該当部の膜がはがれ溝(線)が形成。そこに酸を流し込んで金属板を腐食させるという方法です。

版画家レンブラント展 エッジングビデオ鑑賞風景

会場では、エッチングの実演映像の上映があるほか、使われる材料等の展示もあり。これがとても興味深い!

酸性の液体に浸す時間で溝(線)の太さと深さが変わるため、サジ加減ひとつで作品の雰囲気も大きく変化。もちろん、この原版にインクを流し込みプレスする印刷作業もありと、作品は複数の工程をへて完成します。

レンブラントが手掛けた版画作品が当代、そしてその後の美術界に与えたインパクトは大きく、19世紀のフランスで活躍した著名な美術評論家が「油彩以上」と激賞。

19世紀に起こった“エッチングリバイバル”と呼ばれる再評価の流れのなかでも、カリスマ的に支持されるなど、版画界の巨匠中の巨匠として知られています。

版画家レンブラント展 会場風景

会場はゆったりした展示となっていますが、作品が全体的に小さいため、混雑時はご注意あれ。

上野の国立西洋美術館で始まった今回の企画展は、そんなレンブラント自身が手掛けた貴重な版画作品のほか、その影響を受け制作された弟子らの作品に加え、後世に登場し多大な影響を受けたマティスやピカソといった芸術家たちの版画作品までを広くフォーカス。

版画家レンブラント展 マティス自画像

アンリ・マティス 《版画を彫るアンリ・マティス》 1900-1903年/国立西洋美術館

オランダ・アムステルダムにある、世界で唯一のレンブラント専門美術館「レンブラント・ハウス美術館」の所蔵品と、国立西洋美術館の所蔵品約20点、さらに個人のコレクターからお借りした中心に構成した回顧展です。

展示総数はおよそ130点。

(一部関連作も含まれるものの)レンブラント版画の展覧会としては、過去最大級規模となっています。

ちなみに「レンブラント・ハウス美術館」は、レンブラントが1639年〜1658年まで実際に居住した家を改築し、1911年に開館した由緒あるスポットです!

功績と影響を全3章で解く

会場は大きく3つの章に分かれており、第一章はエッチング技法を開拓し、同じ時代を生きた芸術家が一時の挑戦に終わったことに対し、キャリア全般をかけて作品を手掛け続けたレンブラントの野心ともいえる、挑戦に焦点を当てます。

続く章では、レンブランドから影響を受けた後世の作品を、レンブランドの作品をときにからめつつフォーカス。第二章は17-18世紀、第三章は19-20世紀初頭と、2章に分け展開されます。

今回のレポートでは、うちもっとも重要な第一章を集中的に紹介します。

幅広い主題を扱い続ける

レンブラントが版画のテーマ(主題)とした対象は、肖像、風俗、宗教、風景と、ほかの芸術家と比較してもかなり幅広いものとなっています。

版画家レンブラント展 旅回りの楽師たち

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《旅回りの楽師たち》1635年/レンブラント・ハウス美術館

当時アウトサイダーとみなされていたという、行商人らを扱った《旅回りの楽師たち》などはその顕著な例であるほか……

版画家レンブラント展 民衆につるされるキリスト

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《民衆に晒されるキリスト(エッケ・ホモ)》1655年/レンブラント・ハウス美術館

版画家レンブラント展 聖母の死

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《聖母の死》1639年/国立西洋美術館

聖書の場面や聖人像などを主題とした、「キリスト教」をテーマとした作品も多く手掛けています。

当時のエッチングのメインストリームだった「風景」も手掛けており……

版画家レンブラント展 アムステルダムの眺望

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《アムステルダムの眺望》1641年/レンブラント・ハウス美術館

例えば《アムステルダムの眺望》は、トレンドだった広域な「空」が特徴ですが、注目すべきはそこに「雲」がないこと。なんでもないように思えますが、当時としては斬新だったそう。

さらに、レンブラントにとって風景を正確に描写することはあまり重要ではなかったようで、印刷時に図画が反転することにも執着していません(つまり現実とは左右が逆)。

試行錯誤し可能性を追求

レンブラントは先述の通り、エッチングの可能性を探るためにいろいろな試みに挑戦したことでも知られていますが、会場では同じ作品での“仕様違い”を比較して楽しむことも。

版画家レンブラント展 刷る比べ

左右共/レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《版画商クレメント・デ・ヨンゲの肖像》1651年/レンブラント・ハウス美術館

レンブラントは1度作品を仕上げたら終わりではなく、原盤に手を加えながら印刷後の違いを確かめる原版の“修正作業”を複数回行ったケースもあり、《版画商クレメント・デ・ヨンゲの肖像》は5回実施。会場には、そのうちの2作品が並べて展示されています。

同じ作品ですが、雰囲気が違うことが分かりますね。

版画家レンブラント展 印刷した用紙の違い

左右共/レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《イタリア風景の中で読書する聖ヒエロニムス》1653年頃/レンブラント・ハウス美術館

一方、こちらも2点紹介されている《イタリア風景の中で読書する聖ヒエロニムス》は、印刷に使った「紙」の違いによる仕上がりの差に注目。

写真右は「東洋紙」と呼ぶ和紙を使ったもの。「東洋紙」は、左の「西洋紙」に比べインクが染み込みにくく、優しいにじみが絶妙なグラデーションを表現。コントラストをソフトにするとして、和紙の色味も気に入っていたそう。

雰囲気の違いを、会場でじっくりと見比べて見みてください。

エッチングの極致

版画家レンブラント展 百グルデン版画

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《百グルデン版画》1648年頃/国立西洋美術館

今回の展覧会で、もっとも注目すべきハイライト展示がこの《百グルデン版画》。

新約聖書「マタイによる福音書」第19章で語られる6つのシーンを、1つの作品内で「同時」に表現した斬新さが評価されている傑作です。

画面右から変化する漆黒→グレー→ホワイトの絶妙な陰影(グラデーション)は、交錯する無数の線を駆使して表現されたもので、驚くほどに精緻繊細。じっくりご覧あれ。

ちなみにほかと比べ違和感のある作品のタイトルは、当時としては破格の値段が付いたことによるそう。

関連作品も多数

第二章、第三章ではレンブラントから影響を受けた、時代ごとの芸術家による作品を多数紹介。

版画家レンブラント展 自画像を模倣した 作品

左/ゲオルク・フリードリヒ・シュミット《窓の雲を伴う自画像》1758年、右/レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン《窓辺でエッチングを制作する自画像》1648年 *ともにレンブラント・ハウス美術館

上の写真の2つの自画像のうち、左の作品を手掛けたシュミットは、18世紀のドイツで活躍した“レンブラント信奉者”として知られる芸術家。右のレンブラント作品をベースに、雰囲気を真似(オマージュ)していることが分かるはず。

そのほかにも……

版画家レンブラント展 夜警

シャルル・ワルトネ 《夜警(レンブラントに基づく)》1886年頃/国立西洋美術館/星元太郎氏により寄贈

油彩画家としても名を馳せたレンブラントが、1642年にアムステルダム市の自警団を題材に描いた集団肖像画《夜警》を元に、ワルトネが版画《夜警(レンブラントに基づく)》を制作したほか……

版画家レンブラント展 羽根飾り付きのベレー帽をかぶる男の頭部

フィリップ・ジルケン《レンブラント「羽根飾りつきのベレー帽をかぶる男の頭部」、自宅前のレンブラントとサスキアを描いた小型スケッチ》1886年頃/レンブラント・ハウス美術館

レンブラントの作品を熱心に研究していたとされるジルケンは、レンブラントの《羽根飾りつきのベレー帽をかぶる男》を自分の作品として模写するにあたり、左下にレンブラントと(レンブラントの妻)サスキアの姿をちょこんと加える等、遊び心も!

版画家レンブラント展 ポスター

左/レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン《書斎の学者(ファウスト)》1652年頃/国立西洋美術館、右/フレデリック・レガメ《「エッチングパリ」詩ポスター》/1875年/レンブラント・ハウス美術館

暗い面と明るい面を描線で使い分けつつ表現した、神秘性の高い《書斎の学者(ファウスト)》もレンブランドを語るうえではずせない作品。

熱心なレンブラントファンで知られたドイツの作家ゲーテは、この作品を所有しただけでなく、自らファウストの悲劇を作品として発表した際に、口絵として採用。

作家ヴィクトル・ユゴーは、自身の代表作である「ノートル=ダム・ド・パリ」に《書斎の学者(ファウスト)》のイメージを取り入れるなど、影響がとくに大きい作品なんです。

その右にあるポスターは、レンブランドの評価が明確に確立された19世紀に発行された、週刊誌「エッチングのパリ」誌の宣伝するために制作された街頭用。部分的な違いは複数あれど、オリジナルのテイストが色濃く活かされていることが分かるはず。

版画家レンブラント展 レンブランド作品集

エドメ=フランソワ・ジェルサン《レンブラント全作品のカタログ・レゾネ》1751年頃/レンブラント・ハウス美術館

と、貴重な作品が多数紹介されていますが、なかには、「カタログ・レゾネ」と呼ばれる図録も。「カタログ・レゾネ」は、作品1点ごとに詳細な情報を併記した、18世紀に出版された全作品網羅のカタログ。

芸術家のカタログ・レゾネは、これが史上初だったそう!

グッズも充実!

展覧会のお楽しみである、グッズ販売も充実。

版画家レンブラント展 グッズ

雑貨やクリアファイル、トート、アクセサリーなど、多数あり。関係者に確認したところ、展覧会入場に関係なく、ショップはどなたでも利用可能とのことです。

版画家レンブラント展 図録

展示作品を網羅した公式図録(2500円)もあり。読み応えのある内容となっています!

版画家レンブラント展 キッコーマンレンブラントボトル

ユニークな逸品がコレ、なんと「醤油ボトル」! 今回の展覧会を協賛しているキッコーマンは、オランダにあるレンブラント・ハウス美術館を25年以上によりサポートしており、館内には「キッコーマンルーム」という展示室まであるそう。

レポートまとめ♪

版画家レンブラント展 メインビジュアル

・版画界の巨匠、レンブラント&関連作品の展覧会
・レンブランドの挑戦と、後世に与えた影響を回顧
・本人作品ほか、至極の作品が計130点以上集結!

いかがでしょう!? レンブラントを知っていた方も、これを機にはじめて知った方もぜひ訪れて欲しいこの展覧会。ウェブでは紹介しきれない、繊細かつ華麗な線描の技を間近でお楽しみあれ。

版画家レンブラント展 会場で写真を撮る女性

館内は個人利用に限り、写真のみ撮影OK!気に入った作品をスマホ等に収めお持ち帰りあれ。

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